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さしえ

さしえ

宮本 百合子

「文学新聞」新日本文学会、1948(昭和23)年4月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,593 字 · 4 页

青空文庫

その絵を見て、わたしは何だか自然にうけとれなかった。たとえ一人いる室でも、女は、自分の体の形を説明しているような下着を、こういう向きには干さない。反対に、一枚の布として見える向きにかえる。自然にそうする。自然にそうするところに女の生きた官能も感覚もある。

佐多稲子さんのところに、何年も前からマイヨールの「とげ」という小さい彫像があった。マイヨール独特の親しみぶかいふっくらした裸婦が足にささった小さなとげをとろうとしているところである。その彫像が久しぶりで訪ねた鷺の宮の家のたんすの上に飾られていた。ああここに来ていると思ってながめながら、座布団の上に坐ったとき、わたしは、その彫像の飾りかたに稲子さんの感覚を実につよく感じた。無邪気に足の裏のとげをしらべている可愛い裸婦は、お客に来た人が坐った位置から見たとき、いかにもそれが生きている若い女の心をもっているように、ほんのちょいと体の角度を斜にして、置かれていた。それは、ほんとに自然な優美な角度で、女主人のこころもちが裸婦に通っていた。その置かれかたで、女主人の背後にある裸婦の無邪気なゆたかさが、芸術としてすらりと鑑賞されるのだった。