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さるかにかっせんとももたろう
さるかに合戦と桃太郎
寺田 寅彦
「文芸春秋」1933(昭和8)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,885 字 · 6 页
われわれの子供の時分にはおとぎ話はおとぎ話としてなんらの注釈なしに教わった。そうして実に同じ話を何十回何百回も繰り返して教わったものである。そうしてそれらの話の中に含まれている事実と方則とがいつとなく自然自然と骨肉の間にしみ込んでしまって、もはやもとの形は少しも残らなくなっているが、しかし実際はそれらのものの認識がわれわれのからだのすみからすみまで行き渡ってわれわれの知恵の重要な成分をなしているのである。もしもこれらのおとぎ話を、尻の曲がったごうなの殻にでも詰め込んで丸のみにさせられていたのであったら、とうの昔に体外に排泄されてどこかよその畑の肥料にでもなっていたことであろうと思う。
(昭和八年十一月、文芸春秋)