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だるまやひゃっかてん

だるまや百貨店

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第四巻」河出書房、1951(昭和26)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,178 字 · 11 页

青空文庫

と立って四月の昼間でも暗い納戸へゆき、勤めに着てでる新銘仙の着物を丁寧にたたみつけた。それから洗濯ものをもって流し場へ下りたが、背中の貝がら骨の横が錐をもみこまれるように痛く、肩が張ってやりきれない。たけをは、炉ばたの柴置きから割木を一本とって、それで自分の肩をポンポンはたいた。

「しんどいか?」

「どうしたんやろ……肺病になるかもしれん」

「これ! けったいなこと云わんものじゃわ」

たけをがつとめている町のだるまや百貨店は男の店員百人に対して女店員を二百人つかい、朝の八時から夜は十時まで、一日十四時間という労働であった。朝八時と云ってもそれはもう客の入る時間で、それまでに店員への訓話があり、たけをのような通勤は六時から起き出してやっとだった。家へ帰りついて一服して床につくと早くて十一時半。つまり、十七八から二十ばかりの眠たい盛りの娘たちに六時間位しか眠る間がなかった。四日に一度ずつ今日のように半休があったが、逆に四日に一度ずつの出番にあたれば売場で倍いそがしい目を見るということになる。ふだん日に当ることが少ないので、切戸の敷居に腰かけ、菜の花の匂いのするそよ風に当っているとたけをは疲れが出てボーっとなった。