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だるまやひゃっかてん

だるまや百貨店

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第四巻」河出書房、1951(昭和26)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,178 字 · 11 页

青空文庫

うちにおれば母の手伝いをしない娘や息子はないのだから、嫁入り前の家庭的なしつけのためと云って寄宿舎にいる若い女店員たちは朝は交代に炊事をさせられた。男の小さい店員たちは外まわりの掃除をすることになっている。

毎晩十時すぎ、くたくたになって皆が帰ってくると、起るとから寝るまで白いエプロン姿の幾子が上り口に娘たちを出迎え、

「大きに御苦労さま」

と挨拶し、

「さあさあ、お湯がええ加減ですよ」

と云った。飯たきの中婆さんがやとってあるのに、夜のフロの番は必ず幾子がした。くたびれて帰った娘たちを慰めてやるのは母親の心づくしだ、と云うのだ。けれども女店員たちは一人としてそれをよろこぶものはなかった。

一番に津田が入り、次には年が小さくても男の店員たちが入る。それから女店員が時には幾子と一緒に順ぐりで入る。そんな風にして入る風呂がすめば十二時になるのはあたりまえであった。しかも湯の水が減ってしまっていても、ぬるくて心持がわるくても裸で「奥さん、ちょっとたいて下さい」と、声をかける勇気のある娘たちはなかった。我慢してしまう。呑気そうだが鋭い気性のまきが、いつか、フロを出るなり大きなくしゃみをして、