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どこかにいきながら
どこかに生きながら
小川 未明
「童話」1946(昭和21)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,469 字 · 9 页
じっと、耳をすました子ねこは、急にいらいらしだして、へやじゅうを騒ぎまわり、外へ出ようとしました。
「なんだかようすが変だから、早く出しておやり。」と、お母さんまでが、おっしゃいました。姉のほうの少女が雨戸を細目に開けると、すきまから、烈しい風が、内へ吹き込みました。
「この風の中を、どこへいくの?」と、少女が、いいました。子ねこは、闇の中へ飛び出して、さまよいながら、目に見えぬ影を慕うごとく、悲しい声で、なきつづけました。
「ああ、きっと、母ねこのことを思い出したのだわ。」と、姉と妹は、顔を見合わせました。
あの屋根から、屋根を、子供をつれて歩いていた、やせた母ねこの姿が、二人の目にはっきりと浮かびました。
子ねこは、遠くの方まで、母を捜しにいったとみえ、風のとぎれに、そのなく声が、かすかにきかれました。かつて、寒い、寒い、木枯らしの吹く夜、そして、霜のしんしんと降る夜明け方、母ねこに抱かれて、安らかに眠った、なつかしい記憶が、はしなくも風の音によって、思い起こさせられたのでありましょう。