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なつかしいなかま
なつかしい仲間
宮本 百合子
「新女苑」1940(昭和15)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,477 字 · 9 页
卒業式がすんでしまうと、裏のおばあさんのところへ何度行ってもおけいちゃんには会えないようになった。ねえ、おばあさん、おけいちゃん何処にいるの、しつこく訊いてもいどころが分らず、何ヵ月か経ったら、ふいと、紅い玉の簪をひきつめて丸めた黒い束髪にさしたおけいちゃんが、遠慮がちにうちへ訊ねて来た。マア、おけいちゃん! 手をつかまえて、玄関のわきの自分の小部屋へ入って、膝をつきつけて、どうしたのよ、手紙もよこさないで、と云うと、おけいちゃんは富士額の生えぎわを傾けて、やはりおとなしく御免なさいね、とあやまるのであった。そして、ゆっくりした口調で、私神戸の方へ行っていたの、と云った。それから、ぽつんと、私、初瀬浪子のところに働いていたのよ、と云った。初瀬浪子というのは帝劇の痩せた女優であった。紫のしぼりの襟から真白な頸を見せて、舞台で泣き伏していた女優の姿が目に浮んで、私は、それとおけいちゃんとの結びつきを何となし意外な、おどろいた気がした。女優になるの? そう訊くと、おけいちゃんは袂を膝の上で重ねるようにして、そういうわけじゃないんだけれど、と答えるのであった。