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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

見たこともない神々しさだぞ! こんな荘厳な不尽を見るのは儂も初めてだ! 見ろ! あの白銀に燦めく頂きの美しさを!……おう! 後光だ! あれはまるで神の後光だ!

いつの間にか、文麻呂が向う側から丘の中腹に姿を現わして、輝やかしい瞳でじっと不尽山をみつめながら、立っている。丘の上の二人は気が付かない。舞台右手奥の方にも遠い連山が見え始める。

綾麻呂 衛門! 長い旅路を遥々ここまでやって来た甲斐があったろう? ん?

衛門 (恍惚として見ている)はい。

綾麻呂 都の奴等がいくら偉そうにわめき立てたところで、この素晴しい不尽ヶ嶺の偉容を仰いだものは一人もおらんのだ。……どうだ! あの天の果までとどくばかりの噴煙を見ろ!……なあ、衛門。あの山の頂きは日本中で一番天に近いのだぞ。それから、あの雪だ。あれは、千古の昔から消えたことのない不滅の雪だ。これからも永久に消えることのない不滅の雪だ。

衛門 (ふと、吾に返って)旦那様! 手前、これからちょっと婆さんの所に知らせに行ってやろうと存じます。実は、手前ども、今朝は暗いうちから起きて、あちらの雑木林に瓜畠を作っておったのでございます。