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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

何よりもまず第一に肚だ。肚を落着けて、心静かに待とうじゃないか!……何でえ、しっかりしろよ! (いきなり両手で両膝を抱え込む)

清原 (……これも文麻呂の真似をして、両膝を抱え込む)

長い、気まずい沈黙。

文麻呂 (再び沈滞した空気を振払うかのように)ああ、とにかくこれはすごい竹の木だな。……それにしても、この素晴らしく延びた幹はどうだ。……ねえ、清原。こいつは確か孟宗竹と云う奴だよ。話によるとこの竹の苗は奈良朝の初期に唐の国から移植されたものらしいんだが、三百年足らずの間にどうだ、この東の国の一劃にも、このように幽麗な叢林を形成してしまったのだ。……まるで、もうここはあの国の幽邃境だ。……深遠な唐国の空気がそのままに漂っているではないか。……何と云う神秘な静寂だろう。僕は今、このような竹林の中で想を練ったと云うあの七人の賢者達のことを想い浮べている。………(沈黙)

(ひとりで恍惚として)

独リ坐ス幽篁ノ裏 弾琴復タ長嘯

深林人不レ知ラ 明月来リテ相照ス

(独り言のように)……竹里ノ館か、……知ってるだろう? 王維の詩だ。

清原 (一向に聞いていない。頭の中は心配だけ)