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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

………老爺はさらさらと竹籠を編んでいる。

わらべ達も黙ってそれをみている。

造麻呂 (ふと、編む手を止めて、不審そうに)おや? 何じゃ? 裏の納屋の方で妙な音がしなかったかな?

わらべ達 (きょとんとしている)

造麻呂 なよたけ!

なよたけの琴の音、止む。

造麻呂 ……お前、今、裏の納屋の方で妙な音が聞えなかったかい?

なよたけ (声のみ)……いいえ。

造麻呂 なんだか確かに聞えたような気がしたんだが………

なよたけ (声のみ)またりすの子がゆすらうめの実でも食べに来たんでしょう。

造麻呂 (半ば独白)……りすならいいんだが、……この頃は都の人間たちまでが、この辺にうろうろし出したからな。(再び籠を編み始める)………物騒でしようがない。

沈黙――

なよたけ (声のみ)雨彦!……お前、ちょっと行ってみて来てごらん!

雨彦と呼ばれた少年は「ん」と云って、一目散に裏の方へ駆けて行く。他のわらべ達は一様に彼を見送って、何か心配そうにしている。

雨彦、しばらくして、また一目散に駆け戻って来る。

雨彦 誰もいない。りすもいない。ちゃんと戸が閉まってる。

造麻呂 ふむ、………儂の空耳だったのかな?……どうも、年をとってしまったもんじゃ。