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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

わらべ達、散り散りばらばらに消えてしまう。竹の林がにわかにざわざわと鳴りひびき始めた。……あたりは急に曇って薄暗くなってしまった。なよたけの琴の音が、右手の方から聞えはじめる。………

大伴ノ御行、粗末な狩猟の装束で、左手より登場。中年男。荘重な歩みと、悲痛な表情をとり繕っているが、時として彼のまなざしは狡猾な輝きを露呈する。………

しばらくは外で躊躇しているが、思い切ったように土間の敷居の所に姿をあらわす。

御行 こんにちは、……お爺さん。

造麻呂 (ちょっと会釈を返して、後は素知らぬ顔で、竹籠を編んでいる………)

間――

御行 先日の手紙は、……あのひと……読んで下さいましたか?

造麻呂 (相変らず仕事を続けながら、冷淡に)さあ、どうですか、……まあ、渡すには渡しときましたがね。……何せまだ字もろくに読めないほんの田舎者の小娘でござりまするで、……大層綺麗な紙に書いて下さった、と云って、いやもう、とても喜びましてな。(大納言、嬉し気な表情)昨夜、あれの部屋に行って、ふと何気なく見ましたところが、お手紙は鶴に折られて、天井からぶるさがっておりましたじゃ。

御行 (きわめて情無さそうな表情。