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のろのろほうだんのきょうい

のろのろ砲弾の驚異

海野 十三

――金博士シリーズ・1――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,247 字 · 19 页

青空文庫

砲弾が、ものをいった。ふしぎな砲弾であった。そういいながら、砲弾は、私の鼻先を掠めてそろそろと向うへ、宙を飛んでいった。大体地上から一メートルばかり上を、上から見えない針金で吊られたかのように落ちもせず、すーっと向うへいってしまった。そして最後に、私は、その砲弾が辻のところを、交通道徳をよく弁えた紳士のように、大きく曲ったのを見た。そして間もなくその怪しい砲弾は、ビルの蔭に見えなくなってしまった。なんというふしぎなものを見たことであろうか。夢か? 断じて夢ではない。

ふと、傍を見ると、ロッセ氏も、鋪路のうえに、じかに坐っていた。氏も、私と同様に、腰を抜かしたのにちがいない。

「見ましたか、今のを……。ねえ、ロッセ君」

私は、氏の肩を、ぽんと叩いた。

するとロッセ氏は、とつぜん吾れにかえったらしく、ふーっと、鯨のようにふかい溜息をついた。そして私に噛りついたものである。

「ロッセ君、しっかりしたまえ」

「見ました、たしかに見ました。しかし、僕は気が変になったのではないだろうか。大きなまっ黒な砲弾が、通行人のように、落着きはらって、向うへいったのを見たんだからね」