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ひすいをあいされたきさき
ひすいを愛された妃
小川 未明
「婦人倶楽部」1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,483 字 · 12 页
老人は、以前とちがって、すでにぜいたくに馴れてしまったから、昔のように、山に寝たり、野原に伏すことができなかった。老人は、こんどは、西国へいって、女王に仕えようと思って、とぼとぼとやってきました。
しかし、西国では、それどころでありません。女王は、老人を見ると、たいそうお怒りになりました。
「おまえが、つまらないことをいったばかりに、ふじの花咲く国と戦争をするようになってしまった。この国では、ひすいばかりでない。いっさいの青い石は禁物である。もう、おまえには、用事がない。」と、いわれたのであります。
この国からも追われた老人は、その後、どこへいったか、知るものはなかったのでした。そして、いつしか、ひすいに対する異常な流行は、やんでしまいました。
* * * * *
そのときから、幾世紀は、山をゆく雲の流れとともにたったのであります。ふもとの街は、田畑となり、山の上の鐘楼は、昔の形見として、半分壊れたまま長い間残り、そこには、青さびの出た鐘が、雨風にさらされてかかっていたけれど、だれも、それを鳴らすものがない。たまたま見物に、山を登ってゆく人はありましたけれど、道は草にうもれて消えかかっていました。