轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひとごろし

ひとごろし

山本 周五郎

「別冊文藝春秋」1964(昭和39)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,607 字 · 45 页

青空文庫

「いまごろは笠松の土橋あたりかな」と片方の声が云った、「御城下へゆくのは一本道だ、危ねえからよしたほうがいいぞ」

そういうことならいそぐ用でもないから、今日はここから帰ることにしよう、と初めの男の声が云い、その二人の話し声は遠のいていった。街道でゆき会った百姓たちであろう、あたりが静かだから、ここまで聞えてきたのだろうが、十人や二十人は殺したような面構え、という言葉は、六兵衛の耳に突き刺さり、改めてぞっと身ぶるいにおそわれた。

「だが、待てよ」暫くして彼はそう呟き、高い空の一点に眼を凝らした、「だが待て、ちょっと待て、なにかありそうだぞ、よく考えてみよう」

彼の顔は仮面のように強ばり、呼吸が静かに深くなった。彼は荒神さまを押しのけた。隙を覘うという策はだめだ、現にそれは失敗し、なさけないほどみじめなざまをさらしてしまった。とすれば、この失敗を逆に利用したらどうか、「人殺し」という叫びを聞いて、土地の者が恐れ惑った。いま街道で話していた百姓も、城下まで用があって来たのに、そういう浪人者がいると聞き、用事を捨てて引返した。話を聞いただけで引返した。聞いただけで、ただ話を聞いただけで。