轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ひとりすもう
ひとりすまう
織田 作之助
「海風 第三号」1938(昭和13)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 40 页
ので、ぼくが明らかに明日子に好意を示しているように彼にとられやしないかという心配も忘れてしまって、その日一日中明日子がぼくの前で轡川をやっつける御手伝いをしていた。
その夜、寝床にはいって、電燈を消してから、ぼくは今夜もまた不眠に苦しめられるのかと閉じた眼の前に覆いかぶさって来る無気味な闇とたたかっていると、隣の部屋から、ひそひそと話声が聞えて来た。轡川のくどくどと何かかき口説く様な調子を帯びた声と、明日子のそれに答えるキンキンとした疳高い冷淡な調子の声をきいていると、いよいよ別れ話だなと思った。やがて轡川の声は涙を含んで来て、しまいには啜り泣きになった。ぼくは、明日子の様な美しい女であってみれば、轡川が別れ話に涙を流すのも無理もないと思って同情すら覚えたが、しかし、むしろ轡川に涙を流させた明日子に拍手を送りたい気持で一杯だった。
やがて話声が聞えなくなった。ぼくは睡眠にはいる前の快よい瞼の疲労を愉しんでうとうととしていた。と、ぼくは突然、耳を塞ぎたくなる様な隣室の物音をきいて、まるで外科手術をうけているかの様に血の気を失ってしまった。それは彼らに就て想像もしなかったことだった。