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ひとりすもう
ひとりすまう
織田 作之助
「海風 第三号」1938(昭和13)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 40 页
「あなたは黙ってるんだ」と明日子に言い、そしてぼくの方を向くと、
「のみますね。怖くないでしょう?」と、盞をぼくの手に渡した。ぼくは一口にぐっとのんでしまった。生臭いにおいがプンとして、はき気を催しそうだった。ぼくがそれをのんだのは、「怖くないでしょう?」という轡川の言葉をきいたからだった。ぼくは最初彼が石油を取り出した時は、恐らく彼はその朝ぼくが彼女を嫌いだと言った言葉や、その後のぼくの彼女への態度から考えて、あるいはぼくが彼の肩をもって彼女の迷信だという説に反対して石油をのむかも知れないと思い、彼女の鼻を明かす積りで買って来たのだろうと思った。だとすれば、彼の思惑通りにしてやる必要がある筈だと思った。それは朝以来のぼくの態度の続きとして必要であるし、又、今先ぼくが明日子に接唇したということはとにかく彼には済まないと思える行為であったから、その償いとしても彼を喜ばす必要がある。そう思ったのだが、しかし、明日子にそんなものを飲むなといわれてみれば、とにかく今接唇したばかりの彼女の意に空しくそむくことも出来なかった。だが又、彼の意気込みの激しさはただならぬものがあったから、あるいは彼は部屋にはいって来た時ぼくらの容子を見て、何か疑わしく思ったのではなかろうかと思われて、それでは矢張りその疑いを晴らす為に飲む