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ひとりすもう

ひとりすまう

織田 作之助

「海風 第三号」1938(昭和13)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 40 页

青空文庫

という唄を応募した者があったほどだ。その数日前のことだが、ぼくのいる宿に泊った若い女の二人連れが心中した。廊下でちらと見たが、二人とも醜い女で、安っぽい銘仙の着物をきて黄色なメリンスの兵古帯をしめていた。夜遅くまで海に面した廊下で「大磯心中」の唄を合唱していたが、それがぼくの部屋まで聞えて来るので、それで無くとも眠れぬぼくは癇癪を立てて、喧ましい、と怒鳴った。それで静かになったと思ったら、翌朝白良浜に二人の身体が打揚げられていたのだ。見なかったが、宿の番頭が知らせてくれた。余り騒がれもしなかったし、新聞にも出なかった様だが、醜い女であったからかも知れない。心中するとは知らず、その前夜、邪険に怒鳴って済まないと思っていた。美しい女だったら、怒鳴らなかったろう。あるいは、ぼくも一緒に歌ったかも知れない。

その心中した女たちに比べて、その夜の女の美しさ。死ぬんじゃありませんか、とぼくが言うと、彼女はすかさず、

「あなたこそ、死にそうですわよ」

と言って、ニッと笑った。その微笑は、ぼくの心にまるで針の様につきささった。と言うのは……。

いったい、ぼくの悪い癖なのだが、その頃のぼくには、相手が若い女性である時には、ぼくの如何なる行動からも「男性」