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ひとりすもう
ひとりすまう
織田 作之助
「海風 第三号」1938(昭和13)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 40 页
の海岸に適わしい言葉だけど――と言っている様に思ったのだ。そう思い込むと、ぼくは急に顔が赤くなった。言葉に窮した。誇張して言うと、出番を間違えて舞台に登場した役者の様な間の悪さだった。だが今から考えると、ぼくはそんなに恥しい想いをする必要はなかったのだ。何故なら、ぼくが赧くなり不器用に黙りこんでいる間の悪さは、喀血したというその時の事情が救ってくれていた筈だから。彼女にとっては、ぼくが喀血したということが非常な驚きであって、その他のことは何一つ意に介する余裕はなかった筈だ。
ぼくが尚もじっと蹲ったままでいると、彼女は、ぼくの宿を訊き、とにかく宿へ知らせて医者を呼びに行ってもらうか、迎えの者に来てもらうことにしようと言った。それには及ばぬ、大丈夫歩いて帰えれるからと言って立ち上ると、彼女はそれでは宿まで送って行こうといい、それで二人並んで歩き出した。一口に白浜と呼んでいるが、その土地は、白浜温泉と湯崎温泉の二つに分れていて、その砂浜を横切り、左へ折れれば湯崎温泉、右は白浜温泉であり、浜ぞいにバスの走る道が通じ、白浜湯崎間は八丁なのだ。ぼくの宿は湯崎にあったが、その女のも湯崎だった。