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ひとわれをこうしきしゅぎしゃとよぶ
ひと吾を公式主義者と呼ぶ
戸坂 潤
「中央公論」1937(昭和12)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,981 字 · 19 页
システムがなかったのではない。
思想のシステムが透けてみえないことは、何か文学的な美徳であるというような迷信が流布している。だが、思想のない場合にも、思想は透けて見えないものだ。そして本当に自覚していないような思想は、思想ではない。思想は一種の労作か労働なのだから、どんなに天来の思想でも必ずその思想的なポテンシャル・エナージーを自覚しているものだ。自覚しないように考えられるのは、作家なら作家みずからその思想を説明する別な言葉を持ち合わさぬというまでで、そのためには評論家というものが助けに出て来るのだ。だから本当を云うと、透けて見えない思想などというものは、無思想と同じことなので、システムが見えないものは実は思想でも何でもないのである。思想的言語的表現法を有つ文芸についてはそうなのだ。
思想のシステムが露骨に見えはせぬかという心配は、日本の文学の現状では少し先き走りすぎた越権でさえもあるように思われる。まず第一に心配すべきは無思想と無体系――世界を把握し実在を捕捉する――であり、第二に心配すべきはその思想と体系とが充分に独自な撚りをかけられているかどうか、つきつめて考え抜かれているかどうか、である。