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ひばりのこ

ひばりの子

岡本 かの子

「良友」コドモ社、1920(大正9)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,945 字 · 4 页

青空文庫

その様子がまた、何とも云えないほど可愛らしいので一郎さんが、

「僕それをね、あの籠へいれて育てようや」

とお遊び場の方へ走せて行きました。そうかと思うと、たえ子さんも、

「あたしも、あの袋を持って来るわ」

とあとから、続いてまいりました。

やがて一郎さんは去年の夏、きりぎりすを飼った空籠を持って、たえ子さんは、きしゃごのはいっていたちいちゃな糸網をさげて飛ぶようにして戻ってまいりました。そして、

「さ、婆や」

と両方から、一時にお手々が出てしまいました。

婆やは、はたと困ってしまいました。たった一つしかない子ひばりを、どちらへ渡してよいものやらわからなくなったからです。婆やは、まごまごしておりますと、

「さ、僕に」と一郎さんが急ぎますし、

「あたしによ」とたえ子さんがせまります。

「早くさあ」と一郎さんがつめよると、

「よう、あたしに」とたえ子さんが手を出します。

「僕におくれ」

「あたしに頂戴」

「いやだ!」

「いやよ!」

とうとう二人は云い争って、一度にどっと泣き出してしまいました。泣き出しながらも、なお一生懸命に、たった一つのひばりの子を、争い合うのを止めません。日頃なかのよい兄妹がこのありさまですから、婆やはますますあわててしまいました。