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びっこのおうま

びっこのお馬

小川 未明

「童話」1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,615 字 · 8 页

青空文庫

「そんなら、あしたの晩方、外に出ていてごらん、きっと、あの馬が通るだろうから……。」と、二郎は、兄さんや姉さんにいいました。

「ああ、通ったら、知らしておくれ。」と、兄さんや、姉さんは答えました。

二郎は、あくる日の晩方、友だちらが外に出て、鬼ごっこをしたり、独楽をまわしたりして遊んでいる時分に、独り、みんなから離れて、ぼんやりと往来の上に立って、通る馬や、車をながめていました。また、昨日のびっこの馬が通るかと思ったからです。

二郎の立っている前を通る車や、馬は、黄色なほこりをたててゆきました。ほこりは、これらの馬や車がいってしまった後でも、なお空中にただよっていましたが、ついに昨日のびっこの馬は通りませんでした。

「二郎ちゃん、びっこの馬は通った?」と、家に入ったときに、兄さんや、姉さんは、二郎に問いました。二郎は、さびしそうに頭を左右に振りました。しかし、たとえ、今日、この道を通らなくとも、どこかの往来の上を、今日もまたあのびっこの馬は通るであろうと、二郎は子供心ながらにも想像されたのです。そして、そのいじらしい姿を思うと、二郎は、哀れになって涙ぐまれたのであります。