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ふしぎないわ
ふしぎな岩
林 芙美子
「こども朝日」1948(昭和23)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,676 字 · 8 页
こうしているのがつまらなくなっちまった……」
と、タローは、ウオー、ウオーと、谷間へ向かってほえたてるのです。
「それでも、お前さんは、まだ、私より自由だもの、どこへでも走って行けるだけいいじゃアないか……この谷間の底には、夜になると、ああして美しい燈がついているが、あそこにはいったい何があるンだね? いっぺん、あそこへ行って、私もにぎやかなところで、せいせいしてくらしてみたいものだな。」
と、岩がいうのです。
「うん、そんなに、おじさんが、谷底の人間のところへ行きたいのなら、今夜のような風の日に、ころころと転がって行ってみるといいンだよ。」
と、いいました。そうして、タローは、岩のそばへ来て、
「そのかわり、谷間へ行ってしまったら、ここへもどって来るのはたいへんだよ。それでもよければ、一つ、ここから転んで行ってみるといいのさ。おもしろいこともないが、おじさんの心しだいだな。」
と、笑いながらいいます。岩はそういわれて考えてしまいました。一度、このまま谷底へ降りてしまったら、もう、二度とここへは登れないのだと思うと、やっぱり、ここにじいっとしているのがいいようにも思えました。