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へちまのみず

へちまの水

小川 未明

「北國新聞」昭和16年2月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,190 字 · 5 页

青空文庫

「おまえ、体がだいじょうぶ? どうしても町へいって働く気なの。」と、姉は、心配しました。

しかし、少年は、元気でした。非常時国家のために、りっぱに少年工の働きをしようと決心していたのです。

「だいじょうぶだよ。」

へちまの芽が出て、銀色のなよなよとしたつるが、姉の立てた棒にはい上るころには、正雄は、町の工場で、機械のそばに立って、働いていました。

彼女は、弟の身の上を案じました。あまり強いほうではないが、これから世の中の荒波にもまれていけるだろうかと、へちまのつるを見るたびに思われるのでした。そして、米のとぎ汁や、魚を洗った水などを、へちまの根もとにかけてやりました。

ある日、とよ子は、へちまを見てびっくりしました。棒から、いつのまにかつるは、からたちの木に登っていました。鋭い刺のある枝を平気で、思うかってのままに、ほうぼうへそのつるを拡げていたからです。

「あら、えらい勢いなのね。」

彼女は、これを見て、にっこりしました。弟だって、なにも案ずることがないと、気強く感じられたのでした。

盛夏のころには、へちまは、まったくからたちを征服して、電燈線にまで、手を伸ばしていました。