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みちのき
みちの記
「東京新報」1890(明治23)年8月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,251 字 · 15 页
軌道より左に折れてもとの街道をゆくに、これも断えたる処あれば、山を踰え渓を渡りなどす。松井田より汽車に乗りて高崎に抵り、ここにて乗りかえて新町につき、人力車を雇いて本庄にゆけば、上野までの汽車みち、阻礙なしといえり。汽車は日に晒したるに人を載することありて、そのおりの暑さ堪えがたし、西国にてはさぞ甚しからん。このたびの如き変ある日には是非なけれど、客をあまりに多く容るるは、よからぬことなり。また車丁等には、上、中、下等の客というこころなくして、彼は洋服きたれば、定めてありがたき官員ならん、此は草鞋はきたれば、定めていやしき農夫ならんという想像のみあるように見うけたり。上等、中等の室に入りて、切符しらぶるにも、洋服きたる人とその同行者とは問わずして、日本服のものはもらすことなかりき。また豊野の停車場にては、小荷物預けんといいしに、聞届けがたしと、官員がほしていいしを、痛く責めしに、後には何事をいいても、いらえせずなりぬ。これとはうらうえなるは、松井田にて西洋人の乗りしとき、車丁の荷物を持ちはこびたると、松井田より本庄まで汽車のかよわぬ軌道を、洋服きたる人の妻子婢妾にとおらせ、猶飽きたらでか、これを空きたる荷積汽車にのせて人に推させたるなどなりき。