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みのりをゆたかに

みのりを豊かに

宮本 百合子

「人民評論」1946(昭和21)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,827 字 · 8 页

青空文庫

アナウンサア独特の、何事を報道しても平静を失わない、はっきりしているが職業的平板さの伴った声ではなかった。アナウンサアは、全波を禁止していたこれまでの軍事的権力がどんなに封建的なものであったかということ、そのために国民は自分達の生活の実状さえ知らず、更には偽りで組立てた報道で操られて来ざるを得なかった事実を熱のある表現で説明した。今やようよう全波をきくことが出来るようになって、ラジオはラジオとして本来の機能を発揮する時機が来た。あらゆる聴取者よ、全波受信の設備をせよ。そして、日夜広々とした全世界の脈動に貫かれて生活を向上させ、新しい日本の創設のために努力するようにと、そのアナウンサアの表現は、率直で殆ど激情的でさえあった。いかにも、明暮その仕事に携っている人が、専門家として蒙っていた云うに云えない永年の不自由から、自由になった! これからこそ、と意気ごんだ気組とよろこばしい激励とに満ちていた。日本独特のダラダララジオから、こういう声が響き、外ならぬアナウンサアが、こういう人間的感動をもって、彼等も一専門家として享受するようになった解放の息吹に胸を高鳴らしているという事実は、深くわたしの心を動かしたのであった。