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むかでのあしおと
むかでの跫音
大倉 燁子
「殺人流線型」柳香書院、1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,542 字 · 23 页
思わくをやって失敗する、高利貸から責められる、夢には苦しめられる、という日が長くつづいた後でした。ある日の新聞に、新生寺の住職が失踪したという記事が出ていました。
私は予期していたことに打つかったような気がして、痛しく思い、どうぞ無事でいてくれればよいがと、心に念じていました。
すると天光教の執事が、新聞を見たと云って私の処へ参り、不審顔に申すのです。
『新聞には一昨日から行方不明とありますが、新生寺様は奥書院に居られるのでございますが――』
『じゃあ二日もあすこに居られたのだろうか』
これには私も驚きました。
天光教では新生寺さんが出入する事を秘密にする必要はなかったのですが、彼が頻りに檀家の耳に入るとうるさいからと云わるるので、お互に面倒の起りそうな事は防ぐ方がいいし、また無益な饒舌は慎まねばならぬというわけで、好意から他言せぬようにと執事やその他の者にまで注意しておきました。それに新生寺さんは平常余り長居はせず、鎮魂が終ると直きに帰って行くようでした。私は彼がそこになお坐っていようと、いまいと、そんな事に構わず奥書院を出てしまうので、次の日になって彼がその室に坐っていれば、先に来ていたのだろう位に思っているのです。