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もくねじ

もくねじ

海野 十三

「譚海」1943(昭和18)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,546 字 · 16 页

青空文庫

そのあとに、ぼくは、コンクリートの魂や縄片などと一緒に残っていた。ぼくの身体はもう埃にまみれて、かつて倉庫番から褒めちぎられたときのような金色の光沢は、もう見ようとしたって見られなかった。全身は艶をうしない、変に黄色くなっていた。

埃と一緒に、ぼくは掃き出された。そして放送所の後庭に掘ってあるごみ捨て場の方へ持っていかれた。いろんなきたないものと一緒に、じめじめした穴の中に、ぼくは悲惨な日を送るようになった。身体はだんだんと錆て来た。青い緑青がふきだした。ぼくは自分の身体を見るのがもういやになった。

思えば、ぼくほど不幸な者はない。こんな不幸に生れついた者が、またとこの世にあるだろうか。ぼくを生んだ人間が恨めしい。もっと気をつけて旋盤を使ってくれればよかったんだ。

しかしぼくも途中でちょっぴり幸福を味わったことがあった。それはあの若い職工さんが、くだらない話に夢中になって、僕を放送機の孔に取付けてくれたからだ。あれから、この放送所へ来て、試験が行われている間までは、ぼくはたしかに幸福であったといえる。

だが、今から考えてみると、それは間違った幸福だった。