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もくねじ

もくねじ

海野 十三

「譚海」1943(昭和18)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,546 字 · 16 页

青空文庫

急がば廻れ。念には念を入れということがある」

「ちぇっ。十分念を入れてきたのになあ」

「まあそう怒るな。どれ、そこへ明けてみよう」

太い声の男が、ぼくたちを明るみへ出してくれた。ぼくたちは、ざらざらっと、冷い冷い鋼板の上にぶちまけられた。しばらく暗闇にいたので、眩しくてたまらない。大きな手でぼくたちをなで廻す。

「ほう。これは優級品だ。まだこの手のがあったのか。おい、これでいいよ。ありがとう」

ぼくたちは、ここでもまた褒められた。褒めてくれたのは、仕上げの熟練工の木田さんという産業戦士だった。

「それごらんなさい。私はこのごろふわふわなんかしていませんよ。木田さん、この次そんなことをいうと、私はあんたに銃剣術の試合を申込みますよ」若い男は得意だ。

「あははは。銃剣術でお前が張切っている話は聞いたぞ。いつでも相手になってやるが、油を売るのはそのへんにして、早く向うへいけ」

「ちぇっ。木田さんはあんまり勝手だよ。油なんか一滴も売ってはいませんよ、だ」

若い男は、口笛を吹きながら、向うへいってしまった。

それから木田さんは、また暫くぼくたちを更にほれぼれと撫で廻していたが、やがてぼくたちを両手ですくいあげると、別の大きな機械台の上へ連れていった。