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もののいえないもの

もののいえないもの

小川 未明

「大毎コドモ」1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,387 字 · 9 页

青空文庫

敏ちゃんは、なんだかしんぱいそうな顔つきをして、だまっています。

「どうしたの?」と、姉さんがきいてもだまっています。

「おかしいわ。いつも元気なのに、けんかをしてきたんでしょう。」

「ばか。だれがけんかなんかするものか。」

「じゃ、どうしたの?」

「なんでもないのだよ。」

敏ちゃんは、あちらへいってしまいました。そしてまた、考えていたのです。それには原因があったのです。わけといって、ただお友だちの徳ちゃんが、今日川へ釣りにいって見てきたことを話しただけですが。

「今日、僕、釣りにいったら、一匹の大きなへびがいなごをのんでいるのを見たんだよ。へびって、にくらしいやつだね。だから、石をなげてやった。」

「そうしたら、どうしたい?」

「どこかへはいって、見えなくなってしまったよ。」

話というのは、ただこれだけです。けれど、敏ちゃんにはその話がなんでもなくなかったのは、つい二日まえのことでした。長いあいだかわいがっていたきりぎりすを、その田んぼの方へ逃がしてやったからです。なぜ、そんなにかわいがっていたきりぎりすを逃がしたかというのに。

ちょうど兄の太郎さんが、お庭で草をとっていましたが、家へあがってくると、