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ろまんどうろう

ろまん灯籠

太宰 治

「婦人画報」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,222 字 · 74 页

青空文庫

そこには王さまと、王妃と王子の三人が、晴れやかに笑って立っていました。

「おう綺麗じゃ。」王さまは両手をひろげてラプンツェルを迎えました。

「ほんとうに。」と王妃も満足げに首肯きました。王さまも王妃も、慈悲深く、少しも高ぶる事の無い、とても優しい人でした。

ラプンツェルは、少し淋しそうに微笑んで挨拶しました。

「お坐り。ここへお坐り。」王子は、すぐにラプンツェルの手を執って食卓につかせ、自分もその隣りにぴったりくっついて坐りました。可笑しいくらいに得意な顔でした。

王さまも王妃も軽く笑いながら着席し、やがてなごやかな食事がはじめられたのでしたが、ラプンツェルひとりは、ただ、まごついて居りました。つぎつぎと食卓に運ばれて来るお料理を、どうして食べたらいいのやら、まるで見当が附かないのです。いちいち隣りの王子のほうを盗み見て、こっそりその手つきを真似て、どうやら口に入れる事が出来ても、青虫の五臓のサラダや蛆のつくだ煮などの婆さんのお料理ばかり食べつけているラプンツェルには、その王さまの最上級の御馳走も、何だか変な味で胸が悪くなるばかりでありました。鶏卵の料理だけは流石においしいと思いましたが、でも、やっぱり森の烏の卵ほどには、おいしくないと思いました。