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わがあいするしじんのでんき(さん)

わが愛する詩人の伝記(三)

室生 犀星

――萩原朔太郎――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,406 字 · 22 页

青空文庫

萩原はハンド・バックの購入は妹には必要がないといった事と、佐藤との結婚とは自ら別問題であって、君のような一図な男にはそこに冷静な問題が横っていることには、まるで気のつかない支離滅裂に斬りこんで来る奴だと、彼もその夜は眼を怯えさせて理窟というものを一応きちんと組立てて言ったが、私は友人の妹であるためにハンド・バックを買ってやるということが何故言下に断らなければならない程いやな問題だというのだと、何度も言い直して一晩じゅうハンド・バックという言葉ばかりを喋って、私の正当な真実をこの友の前でいかなる言い廻しで、つたえる事が出来るかに飽きなかった。これ以来、私の胸中にはハンド・バックというものに恐怖を感じ、滅多にそれを女の人に買うということを怖れるようになっていた。

私はさらに佐藤惣之助にも当り散らして、君も君だ、金も取れない君のために夜はおそくまで三味せんを弾いて長唄を教えていた奥さんが死んでから、まだ半年も経たないのに結婚だか強請だか知らないが、奥さんの亡霊のふわふわ襖のかげや厨にふらついているところに、後添えをもらうということは少々あつかましく早すぎるじゃないか、せめて一年くらい精進をしたあとで何分にも不自由だからと言って体裁好く貰うなら貰ってもいいのに、何時の間にかこそこそと二人で相談して結婚するなんて