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わがぶんがくしゅぎょう

わが文学修業

織田 作之助

「現代文学」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,981 字 · 6 页

青空文庫

私の小説の話術は、戯曲の科白のやりとりの呼吸から来ている筈だ。

「夫婦善哉」を書くまでは、一人の作家とも知己がなかった。原稿を見て貰ったことも教を仰いだこともない。間接に師と仰いだのは、前記の作家たち、ことにスタンダール、そしてそこから出ているアラン。なお、小林秀雄氏の文芸評論はランボオ論以来ひそかに熟読した。

西鶴を本当に読んだのは「夫婦善哉」を単行本にしてからである。私のスタイルが西鶴に似ている旨、その単行本を読んだある人に注意されて、かつて「雨」の形式で「一代男」をひそかに考えていたことはあるにせよ、意外かつ嬉しかった。その頃まだ「一代男」すら通読していなかった私は、あわてて西鶴を読みだし、スタンダールについでわが師と仰ぐべき作家であることを納得した。

私は「世間胸算用」の現代語訳を試み、昨年は病中ながら「西鶴新論」という本を書いた。西鶴の読み方は、故山口剛氏の著書より多くを得た。都新聞の書評で私のこの書を酷評した人があるが、私はその人たちよりは西鶴を知っている積りである。西鶴とスタンダールが似ていることを最初に言ったのは私であるが、これは他日詳しく論ずる。