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わがまち

わが町

織田 作之助

「文藝 第十巻年十一号」改造社、1942(昭和17)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 页

青空文庫

「それじゃ、何ですか、今でもやっぱり、人間は働かな嘘やと、言うてられるんですな。」

と、君枝をかばう口調になり、「そう言えば、僕だって、他あやんのあの口癖は時どき想いだしましたよ。いや、げんに今だって……」からだ一つが資本の潜水夫が仕事で、二十三歳から此の道にはいり、この八年間にたいていの日本の海は潜って来、昨日から鶴富組の仕事で、大阪の安治川尻へ来ているのだと、次郎は語った。

「いや、こんどのはたいした仕事じゃないのだが、大阪が恋しくて、つい……。」

文楽でも見ようということになり、佐野屋橋の文楽座の前まで来ると、夏の間は文楽は巡業に出ていて、古い映画を上映していた。

「なるほど、わざわざ大阪で見なくても、東京に居れば、見られた勘定やな。」

次郎はちょっとがっかりしたが、ふと想い出して、「そや、あんたの喜ぶもん見せたげよ。」

と、君枝を四ツ橋の電気科学館へ連れて行った。

そこには日本に二つしかないカアル・ツァイスのプラネタリウム(天象儀)があり、この機械によると、北極から南極まで世界のあらゆる土地のあらゆる時間の空ばかりでなく、過去、現在、未来の空までを眺めることが出来るのだ、実は昨日偶然来てみて驚いたという次郎の説明をききながら、君枝はあとに随いて六階「星の劇場」