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わがせいしんのしゅうい
わが精神の周囲
「群像 第四巻第一〇号」1949(昭和24)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 页
家などというものを建てたいとも思わなかったし、私の力で家が建つなどとは考えたこともなかったのに、実際家が建つことを信ぜざるを得なかったのである。檀一雄の隣家は真鍋呉夫の家であるが、この殆ど無名な(家を建てた当時に於ては完全な無名であったろう)若い作家が、二百円か三百円の原稿料の、それも半分は不払いの不便を忍んで、食うものも食わずに家を建てた。真鍋君は、一時はまったく栄養失調であったという。彼の説によると、坂口安吾ごときは自分の何倍かの原稿料を貰っているから、温泉などで小説が書ける。自分はそうはいかないから、自分の書斎が必要である。そういう説であったそうだ。ところが、その後、檀君を通じて私と知るようになり、私の貧乏ぶりを目のあたり見て前説をひるがえしたらしい。坂口安吾にも家を建てさせなければならぬ、そこで檀一雄を説いて、私に家をつくらせるようにしたのだそうだ。なるほど、真鍋呉夫に家が建つ以上、私に建たない筈は有り得ない。私はこの奇蹟を信じたのである。そして檀一雄に説服された。
檀一雄は大工を一人雇っている。まだ十八だが、腕は良く、月給は一万円だそうだ。