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わがちをおうひとびと
わが血を追ふ人々
「近代文学 第一巻第一号」1946(昭和21)年1月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,546 字 · 21 页
けれども経験といふ不手際なツギハギが叡智の栄光でないことは大人達も認めてをり、彼らはツギの当らない着物の美しさを忘れてゐないばかりでなく、眩惑されたり、時に本能的な喝采を送りたがる愚昧な感動を忍ばせてゐる。それはもう愚昧の外の言葉はない。このツギハギを取り除けば大人は子供に附け加へた何の値打も持つてはをらず、分別の殻を負ふてゐるだけ始末の悪い気違ひだつた。彼らは間違ひを合理化し益々愚昧に落込むことを急ぐのだ。
すべてそれらの大人達の愚かさを四郎は別の角度から見抜いてゐた。彼らは正直で狡猾で一定の複雑な内容を持つてゐるが、発育の止つた身長と同じやうに全てがすでに限定せられて、要するに使役に馴らされてゐるといふことだつた。自分を常に大人達のその上に置いて、彼は絶対の王者を夢み、やがて確信しはじめた。
彼らが商品を船に積みこみ明朝出発するといふ前夜のことだが、その晩長崎の二官の店では四郎父子を主賓に小さな饗宴がひらかれてゐた。そのとき飄然訪れたのが金鍔次兵衛で、彼は江戸から逃げ戻つて、長崎の二官の店へ辿りついたところであつた。
逃亡と潜伏、死の戯れの半生に次兵衛の魂は孤絶したが、孤絶せる魂には死生も亦たゞ退屈にすぎず、魂の結び目をとく何物もなかつたけれども、たゞ人間の肉体、容貌の美といふことが異常な刺戟になる