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「インガ」

「インガ」

宮本 百合子

ソヴェト文学に現れた婦人の生活

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,443 字 · 29 页

青空文庫

――インガは彼女のよいもちものをドミトリーに、ドミトリーはインガにない力を、互に与えあって、益々豊富な新しい社会への貢献をする望みだった。その重大な意味をドミトリーはどうも理解しない。

「俺は知ってるよ、お前がグラフィーラでないってことは。そりゃ下らないこった。が、俺は十一年間自分の洗濯もんや朝飯のことは考えずにやって来たんだ。」

こういう不平を、ドミトリーはそれも家で云うのではない。工場管理者室で、事務机の前でインガに云うのであった。さすがにまさか、それだけを云いに来たのではないのであった。彼は換気設置の問題で来たのだ。

「俺は職場中に約束してしまったんだ。この四半期内にやっつけるって。今更、もう三月待てなんぞと云って見ろ……それこそ物笑いだ。工場管理者の御亭主……自分の女房にさえ統制が利かないって……」

然しそれは、ドミトリーの勝手な間違いであった。工場の仕事は計画によっている。インガは、この三月内に托児所を設けることを決定し、それは着手されている。

「私はあなたの自尊心のために、そこいら中の壁をこわしてはいられない。換気設置は次の四半期にします。