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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ
エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説
戸坂 潤
「カント著作集 第一一巻」岩波書店、1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,570 字 · 72 页
私はこの第二の道を暫定的に而も極めて手短かに試みて見よう。
已に初めから明らかである通り、本文はカント時代の自然科学の状態を標準として書かれる外はあり得なかった。そこには第一にオイラーやランベルト等によって代表されている時代の数学がある。第二にそれはニュートンの物理学によって代表される自然科学を持っている。より具体的に云うならば幾何学は必ずユークリッド公理体系による三次元空間の理論でしかあり得ず、物理学は近代的形象として許される電磁気的世界観――近接作用の思想をば知らない。――化学は今日の厳密性をまだ獲ていない。であるからかかる想定からもしカントがその哲学的な特殊の個々の意見を惹き出したとすれば、それはカントと雖も免れることの出来なかった歴史的制限の外の何物でもない。従って吾々はこの場合にかかる制限を理由にしてカントの本文に於ける価値を疑うことは愚かであろう(この種の制限を私は注解に於て注意した)。併しながらカントは注意深くも、シェリングやヘーゲルとは異って、当時の科学に於て可変的なものと不変的と思われるものとを区別し、前者をば殆んど凡て仮言的な云い表わしを用いてその「注」