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オフ・ア・ラ・コック・ファンタスティーク

オフ・ア・ラ・コック・ファンタスティーク

森 於菟

――空想半熟卵――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,177 字 · 7 页

青空文庫

ぼくは、江上さんにつられて眼じりを下げていた顔を権威ある教授の顔になおしてふりかえる。そして学問に関しなかばモーロクしかけた師よりもはるかに熱心な弟子にむかって質問の内容をききなおすのである。

卵の殻のほうにも空想がある。いや空想というよりも意地きたないぼくは、きわめて現実的な提案のつもりだ。時間がないので実験はしてみないから、可能か不可能かはわからないが、どうもできそうな気がする。ぼくが考えているのは色変りの半熟卵だ。

ぼくは半熟卵が好物だ。毎朝古女房に半熟卵をこしらえてもらって、白い瀬戸のふちで生あたたかい白い楕円形をコチンとたたくときの気持はなんともいえない。それを二本の指でカッと開くとどろりとした白身が湯気をたてて黄身といっしょに落ちてくる。スプーンで殻の内壁についた白身を削りとり、それに塩か醤油をかけ、あるいは女房の眼を盗んで化学調味料をちょっぴりかけ、それをスプーンでしゃくって食べる。貧乏なぼくにはそれが涙がポロポロでてくるほど旨いのだ。下手な宴会料理なぞよりはるかに旨い。

ところでぼくはこうして毎朝卵を一つずつ充分満足して食べているのだが、自分の幸福に満足しながらもときどき思うことがある。