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カメラのしょうてん
カメラの焦点
宮本 百合子
「作品」1937(昭和12)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,143 字 · 5 页
なかに、小型写真機を胸の前にもって、松の樹の下に佇んでいる同僚をうつしているつつましい背広姿もよく見かける。外国であったら、その時松の樹を背景として立っているのは、陽気に皓い歯並をキラメかせている同僚の女の子であるだろうのに、お濠のまわりの人目の多いところでは、殆どいつも男が男の仲間をとってやっているのも如何にも日本らしい。
特別議会が終ったが、ここで臨時増税が決定した。新たに増税されるものの種目に、写真機及その附属品、原料というのがある。フィルム、原像液、引延機、みんな其々に税がかかるのであろう。写真機の大衆化は、その生産過程の特殊性から或る方面の支持によったのであるそうだが、ずうっとひろげておいて今度はそこから零細なようでつもると大きいものを〔二字欠〕上げて来るという方法である。例えばどんなに税が高くあろうとも妻や妹はウビガンの香水を常用しているという部分の人々にはどういう感じをおこさせるかしらないが、都会の人口の大多数を占める下級中級の若いサラリーマン、勤労青年たちが、いささかの慰みとしてアパートの部屋でかけて聴いている蓄音器、レコードその他の楽器に新しく税がかかったり、写真機に税がかかったりすることは、直接月給が減ったのと同じような切ない感情を呼びさまされるのである。