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ガラスまどのこうほね

ガラス窓の河骨

小川 未明

「赤い鳥」1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,383 字 · 7 页

青空文庫

この人に買われていったら悪いことはあるまいという気がしたので、

「どうか、私をもっと広い、自由なところへつれていってください。」と、訴えたのでした。

その心が、おじいさんに達したものか、しばらく、花に心をひかれたように、ながめて立っていましたが、

「いまは、会社への出がけだから、どうすることもできない……。」と、軽く、心のうちでいって、窓から離れると、ちょうどそこへきあわせた、乗合自動車に乗っていってしまいました。

その日の昼ごろ、おじいさんは、会社の応接室で、テーブルに向かい、大きな腹を抱えて、パイプをすぱすぱ吸いながら、お客と話をしていました。そのとき、おじいさんは、ふと、今朝、花屋の店さきで見た河骨を目に思い浮かべたのです。

「夏は、水草はいいものだ。あれを一鉢買っても悪くないな。」と、笑いながら、お客の話とはまったく関係なしに考えていたのでした。

しかし、おじいさんは、会社からの帰りに、宴会があって、その方へまわりました。そして、河骨のことは、それきり忘れてしまったのでした。

河骨は、あいかわらず、自分に同情を寄せてくれる人のくるのを待っていました。