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ガルスワーシーのいえ
ガルスワーシーの家
岡本 かの子
「行動」1934(昭和9)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,123 字 · 18 页
――それに引きかえ私達の国の人間を御覧なさい。児どもでも老人のようには見えませんか、青いうちに皺の入った瘠地の杏のように。別けて中産階級の児どもは。犬でも鶏でも、どうも私達の国のものは年寄り染みてるらしいのです。困りましたね」
いつか新らしく茶を運んで来てまた、夫の傍に坐って居た夫人は此の時ちらりと夫の顔を見た其の瞳にはそれほどまでの話をしなくともと夫を窘める様子に見えた。けれども老文豪は信ずるところあるものらしく逆に言葉を強めて言った。
――一番いけないことは私共英国人の趣味に消極を楽しむという傾向の入って来たことです。それも東洋人の持つような積極的に通ずる徹底した消極趣味というのではたく、五分縮められ、三分縮められて行くことに反抗しながらしかも押し流されて行く、其処に人生の味があるのだと思うようになってしまったことです。退嬰を悲しむうちはまだ脈があります。退嬰を詩に味わうようになったらおしまいです」
景子は此の文豪の著作の「銀の匙」の趣意を想い出した。「銀の匙」を使い切れぬようになっても銀の匙を思い切って投げ捨てられない未練な英国人を頭に浮べた。