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キドこうか

キド効果

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 25 页

青空文庫

(何ごとだろう?)

丘先生――すくなくとも唯今の時間、この教室に於ては――黒板に書き連ねている数式を途中でやめて、机の上の紙片を見た。そこには次のような鉛筆の走り書がしてあった。

「木戸博士から再三再四電話が懸ってくるので、時間中ながら鳥渡お伝えする。曰く、大学の講義なんかいい加減にして早くこっちへ帰って来ないと首にするぞ、とさ。松下生」

松下というのは、丘よりも一年前に卒業した助教授の名だった。

これで見ると、何か急用が出来たらしい。真逆学生たちに「講義なんかいい加減にしろといわれたから」と云って退場するわけには行かないから、急用だといって講義を打切った。

自動車を拾い、慌てて木戸博士のところへ帰って来た丘助手は、室に入るなり、博士の様子がお違いになっているのに駭いた。あの沈着な博士が、まるで檻の中に入れられたライオンのように、室内を歩き廻っていられるのだった。無論、丘助手が入って来たことなどには気のつかれぬ模様だった。

「先生。唯今帰りました」と丘は声をかけた。

図

「おお、丘君」博士は興奮にギラギラ輝く眼を助手の方に向けて叫んだ。「いや、大変なことを発見したのだ。