轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

02 雪の山小屋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,012 字 · 48 页

青空文庫

山小屋の入口から、アストラカン・クロスの上衣に派手なマフラアを巻きつけた森川氏の末娘の梓さんがヒョックリと出てくる。つづいて、黒いウールンのスキー服を着たキャラコさんがスキーをかついで現われてくる。

梓さんは締金具をしめ終ると、麓のほうへ片手をあげて叫ぶ。

「おうい、直滑降だぞォ」

麓にいる連中が、怒鳴ったり、拍手したりする。

「やれイ――」

「やッつけろ――イ」

梓さんは身体をかがめると、銀色に光るスロープにあざやかなシュプールをひきながら、一団の雪煙りになって弾丸のように滑降して行った。キャラコさんは、ちょっと心配そうな顔つきで眺めていたが、梓さんがみごとなフォームで制止したのを見届けると、スラロームを描きながらゆっくりと降りて行った。

毎年の例では、大姉さまの朱実さんか森川夫人が、お転婆さんたちの世話やきと監督にやってくるのだが、今年は、長兄と次兄が二人ながら戦地へ行っているのと、朱実さんのお嫁入りがちかづいたのとで、とてもこんなところへ来ていられない。

こういう場合には、いつもキャラコさんに白箭の矢がたつ。

森川氏も森川夫人も、二人ながら熱心な長六閣下の帰依者だが、それと同時に、沈着で聡明な長六閣下の末娘にも絶対の信頼をおいている。