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ケーテ・コルヴィッツのがぎょう

ケーテ・コルヴィッツの画業

宮本 百合子

「アトリエ」1941(昭和16)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,607 字 · 22 页

青空文庫

若い時代に大変苦心して大学教育をうけ、判事試補にまでなったのだが、当時ビスマークを首相として人民を圧迫していたウィルヘルム二世の官吏として人民に対することは、自分の良心にそむくことを知って、職をすて、改めて左官屋の仕事を学んだ。左官屋といっても、ドイツではただ壁をぬるばかりが仕事ではなくて、煉瓦を積んで家を建てる仕事や、その家々の装飾の浮彫石膏細工をつくるという風な美術的技量のいることも、やはり左官の職分にこめていたものらしく思われる。

カールのそのようなはっきり良心にしたがって生きる人柄と人生に対する態度とは、誰でも真似られるという種類のものでなかった。このカールの生き方は、妻であったケーテの家の伝統とも深い精神上のつながりを持ったものであった。ケーテの父はユリウス・ループといって、ドイツにおける最初の自由宗教の牧師であった。知られているとおり、ウィルヘルム二世はビスマークの扶けをもって、正義と皇帝の絶対権とを結びつけて人民にのぞんだが、十九世紀前半のその頃の欧州は近代社会の経済事情の飛躍とともにウィルヘルム、ビスマークのその政治につよく反対していた。