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「ゴーリキイでん」のちえんについて
「ゴーリキイ伝」の遅延について
宮本 百合子
「文学案内」1936(昭和11)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,291 字 · 3 页
私が、ゴーリキイの評伝を一冊にまとめて見たいと思った動機は二つあった。一つは、どちらかというと外部的な事情であった。
ゴーリキイが亡くなった後、私は、数篇の感想や評伝的なものを書いたのでそれをきっかけとして、一冊の本にまとめたら読者も或はゴーリキイを理解する上に幾分の便利をされるのではないかと思ったことであった。
もう一つの理由は、ゴーリキイが偉大な作家であるということが一般の通念になっているために、そこから二つの態度が生じている。その一つは、ゴーリキイを無条件にプロレタリア作家の先達であり、父であると見る態度であり、他の一つは、それに対してやや皮肉に、ゴーリキイが偉いというのは成程そうであろう、だが他にもっと偉い作家というのは何人かいる。何もゴーリキイがなくたってやってゆけるのだし、自分らが、ゴーリキイの真似をしないだっていいのだ。ゴーリキイはゴーリキイだ。そういう態度である。この二つの目立つ傾向は、例えばゴーリキイを記念するために多くの人々が執筆したごく短い感想の中にも看取された。
私は、そのいずれもが、ゴーリキイ自身の発展の意義や彼と新しい歴史的世代の文学の生長との関係を、正当にとらえていないことを感じた。