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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页

青空文庫

に至ったのだった。中でもチェリーの中毒症状は殆んど致命的だと診断を下された。しかし一体誰が、丘田医師のところからヘロインを盗み出したのだ。丘田医師はかねてヘロインを手にしてからというものは、パントポンの代りに、この粗製品を使って世間を胡魔化していたことは、帆村の調査によって証拠だてられたところだ。――実をいうと、帆村はこのことについて何も云わないのであるが、丘田医師のところへ検べに行った夜、ゴールデン・バットの傍の橋の上から、なにか白い紙包を川中に投じたが、あれが丘田医師のところにあったヘロインではあるまいかと、私は考えている。あの高い棚の上にあった銀玉はきっと真中から二つに割れるボンボン入れのようなものであったろう。

海原力三は無罪となり、放免された。

しかし丘田医師は、あの夜から、どこへ逃げたものか、行方不明である。――しかし後日談を云うと、あれから三ヶ月ほどして、帆村は大阪の天王寺のガード下に、彼らしい姿を発見したという。しかし顔色はいたく憔悴し、声をかけても暫くは判らなかったという。丘田医師は、今もさる病院の一室で、根気のよい治療を続けているという。