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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

この人が衣子の恋人であった。

大浦博士は色好みの人であるから、衣子という一人の女に特別打ちこむようなところはなかったのだが、その財産には目をつけた。そういう人だから、私が砂糖だバタアだ醤油だ米だとチョイ/\差上げるのを狎れてきて、まるで当り前のように、今度は何をとサイソクする。私を三下奴のように心得ている。先方がこうでるようになればシメタもので、私の方はサギにかけよう、今に大きくモトデを取り返してやろう、そんな金モウケはミジンも考えていないのだから、相手が私をなめてくれると、友達になったシルシのように考えるだけの話なのである。

なめられる、ということは、つまり相手が私に近づいてくれたことなのである。さしずめ、私は、もう背中を流してやることができるわけで、女の場合なら、その肌に近づいたというシルシなのだ。

だから、私は、わざと、こうやって犬馬の労をつくすからは、私だけ、ということはないでしょう、私にも、なにかモウケさせて下さいな、と云って、大浦博士の文章をいたゞいて、新聞や雑誌にのせる。精神病だの婦人科だの法医学などゝ違って、内臓外科、こんなものゝ文章は当節は一向に読み物にはならず、大博士の文章でも、もらって有難メイワクであるが、そんなソブリはいさゝかも見せず、たゞもう嬉しがり、恩に感じて見せるのである。