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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
みんな自尊心が強くって、そのアガキの果に、マジナイみたいにピエロ気取りでいるだけですよ。私は、自尊心がないのです。ですから、ピエロ、下僕ですよ。私は尊敬し、愛するものに、すべてをあげて奉仕すれば足りるのですよ。私はあなたに軽蔑されてもよろしいのです。それでもマゴコロをさゝげています。踏んづけられても蹴られても、やっぱりマゴコロをさゝげて、かりそめにも仕返しなどは致しません。どうせ、それだけのものなんだから、ひとつ、と、私は今朝ふと思ったのです。急に自殺のマネをしてみようと思ったのです。実際、死んでもよかったのです。まったく、そうでした。私は胸のインキのタマを握りしめていたとき、死ぬマネをするなどゝは思わず、実際、短刀を握りしめているのと変りのない気持になっていたのです。よし、死のう、と思いました。おかしくもなければ、悲しくもなかったです。まったく、無意味千万でした。でも、ヤス子さん、このバカさ、これは、いつわらぬ私の姿なんですよ。恋をしても、これだけ、恋に奉仕しても、これだけ、いつも、これで、全部です」
私はヤス子の手をとり、バカみたいに敬々しく、くちづけした。