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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
私は、大浦博士の知らないヤス子の肉体を知っている。
私は然しそのほかに何一つとるに足らない人間にすぎない。大浦博士は、名医であり、教授であり、学者である。立派な風采をもっている。ひろい趣味をもっている。洗練されたマナーをもっている。
どうして、こうも嫉妬深い私であろうか。私はヤキモチはキライなのだ。然し私はいつも嫉妬に狂っている。
私はヤス子を誘う。今夜はダメですと云う。大浦先生と約束があると云う。又、ほかの誰かと約束があると云う。今日は家に用があると云う。一しょに夕食をとっても、それだけで帰ってしまう。
ヤス子はハッキリと私を見つめて返事をする。それは嘘はつきません、ということではなくて、こゝまではホントです、というように私には見える。そして、そこから先は、私は訊くことができない。
「ヤス子さん、あなたは恋愛したいと思いますか?」
「えゝ」
と、ハッキリ答えるのである。
「どんな人と?」
「一番偉い、立派な方」
「有名な人がお好きですか」
「有名な方は、ともかく才能ある方でしょう。女は有名が好きですわ。すべての方に好かれる人を、自分のものにしたがるのですわ」