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スモーリヌイにひるがえるあかはた

スモーリヌイに翻る赤旗

宮本 百合子

「大阪毎日新聞」1931(昭和6)年1月5日~21日号(15日号、19日号を除く)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,354 字 · 51 页

青空文庫

ムイロフも一緒にあたりを眺めながら、

――レーニンは十月革命のあいだずっとここにいた、……もと、華族女学校の女中部屋だったところですよ。

なるほど左の壁には、いくつも並んで水道栓と流しがついていた跡がある。細い部屋だ。つき当りに一つしか窓がない。大きい戸棚が左の壁と窓との間に立っている。戸棚には錠がおろされ、赤い封印がついている。

――住んでいたのはこっちです。

三尺の戸がついていて奥の室へ通じる。入口の室の倍ほどの大きさの四角い室だ。どっちにしろごく小さい室だ。むきだしの木の床に粗末な赤ラシャ張りの椅子が三四脚ある。バネがこわれた長椅子がある。机は相当大きいが、ひどいものだ。鉄寝台の、すっかりバネのゆるんで下へたれたのが二つ、たれ幕のうしろに並んでいる。ここは窓が二つだ。が入口はない。どうしても、手前の、水道栓のあとのある室を通って来なければ、こっちへ入れないように出来ている。

レーニンは十月革命前後から、モスクワへ首府をうつすまで、この一室で、この椅子で、妻のクループスカヤと仕事していたのである。

レーニンは、外国亡命中にも、いろんな都会や田舎で、いろんな室に住んだ。