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スモーリヌイにひるがえるあかはた
スモーリヌイに翻る赤旗
宮本 百合子
「大阪毎日新聞」1931(昭和6)年1月5日~21日号(15日号、19日号を除く)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,354 字 · 51 页
よいか?
――ええ。
坊主は、子供の頭に十字を切ってやって、いう。「神爾とともに在れ!」
ブルジョアは自分達の劇場をもっていた。自分達の絵画館をもっていた。働く人間、彼らのいわゆる「黒い町」の住人どもに与えられているのは、ブルジョア国家がその税で富むところの火酒と教会と無智であった。(労働者農民の子は大学に入れなかった。兵役につけば終身兵士以上にはなれなかった)。そしてもちろん、ブルジョアが美しい馬にひかせた橇で雪をけたててやって来る劇場へは、入るどころではなかった。(侯爵であったクロポトキンでさえ、学生の制服姿のときはオペラ劇場の天国でやっと音楽をきいたと思い出の中に書いている。)
十月の革命は、ロシアの支配者をブルジョアからプロレタリアートに代えたと同時に、こういう状態を根本からかえた。オペラ劇場で、今日「ボリス・ゴドノフ」を聴いている聴衆は、昼間工場や役所やで、木綿服で働いている男女の勤労者である。金ピカの棧敷や、赤ビロードで張った座席には、冷たい水で顔を洗い、さっぱり洗濯した白木綿のブラウズをきた女が、音楽をききながら、いい香のロシア・リンゴを前歯でかいては、たべている。